「イーダ」

odo-mikikov2014-08-25

ポーランドのひとが撮ったポーランドの映画でした。ナチスの傷がまだ色濃く残っていた時代に、しんだように生きる中年女性と、神と生きていこうとする寡黙な少女の、自分たちの真実を知る旅が、まったく美しい映像で語られます。モノクロの陰影と少ない台詞で構成されておるんですけど、観客が人物たちの心の変化や過去に何が起こったかを察すことができる、最小限の丁度いい塩梅のところの、たいへんよい映画でしたから、観ていない人は観たらいいと思います。心がしんでいることで有名なミキコフが、2個隣の席のご婦人の足が臭いのがしーきびだったことを差し引いても、心底満足しましたので、結構いいやつだと思います。他人の足の臭さを払拭する映画です。旅の途中で出会ったカッケージャズメンがコルトレーンをサックスで切なくファファーンと吹いて、冬の時代を抱えたままの叔母さんは酒でヨレヨレになり、修道女であるイーダ(主人公)は修道女たらんとする。ようできた構成だと思います。両親のお墓を探したいというイーダに、叔母さんが「神が存在しないと知ることになっても行くか?」と言ったあとに、「うそだよ。神様はどこにでもいるわよ。」と笑って否定したシーンが、後半の叔母さんの行動とオーバーラップしてこころが悲しみでいっぱいになりましたし、叔母さんの職業が検察官であることが、この行動の説得力になっておるなあと思いました。それまでの静謐さと反比例するゆらゆら躍動するラストシーンでは、「たはー!そうくるかー!」てなりました。