「パプーシャの黒い瞳」

美容室で出されたファッション誌の占いページをすっとばして読んでいたら、美容師さんに「占い、興味ないんですね(笑)」と言われるスピリチュアル要素ゼロカロリーのミキコフですが、生まれた時に拝み屋のばばあに「縁起悪い名前だ。波乱が起きる。」と言われたら本当に波乱万丈になった映画をみてきました。主人公は、世界初の女性ジプシーの詩人、パプーシャというひとでした。世界初の女の人というのはだいたいどの時代でも大変と決まっているので、パプーシャも人生が大変でした。ジプシーの人々は、自由を謳歌する代わりに、スピリチュアルとコミューン内の戒律でバランスをとって生きていましたが、戦争中はジェノサイドの対象になり、終戦後には国から定住・定職を課せられジプシーではなくなりました。しかし、暮らしはジプシーできなくなっても、こころはジプシーなのでみんな頭が忙しくなって、怒ったり、家を壊したり、だいたい誰かがうおー!と叫んでいました。パプーシャも、わたしが読み書きを覚えたせいでみんなが不幸になった、呪いだ!となってうおー!になっていました。パプーシャが喧騒を逃れ一人でタバコを吸うシーンや、彼女の詩を世の中に紹介した詩人とパプーシャの最後の別れのシーンはまったく抒情的で特に素晴らしかったです。言葉に呪われた人のてんやわんやを全編モノクロの静かな映像でお送りしてくるので、映画館行くとだいたい寝ちゃうよ、という人は観なくても大丈夫です。時代が行ったり来たりしながら展開し、一つ一つの場面が結構大事なので、所々寝ちゃうと面白くないタイプのやつだと思います。