「大いなる沈黙へ」

フランスの緑深い峰の麓にある、宗教の人々が住んでいるところの「生活」を撮ったドキュメンタリーを観てきました。平日の夜の回だったのですが、結構な人数で、岩波の社員さんたちがすごく丁寧にアテンドをしてくだすって、人々は静かに開場を待っていました。わたくしの少し後ろにならんだ男性二人の内、誘われてきたと思しき方の人は、まったく興味なく来たらしく、「音もナレーションもないの?寝ちゃいそう。」と言っていました。さらに、「へ〜、岩波って出版とかするの?」とも言っていたので、なんでまたこの方をお誘いになったのかしらと不思議でした。もっと上映時間も短く、セリフや音のある映画にお誘いしたらよろしかったのにと思いましたがなんだか二人で楽しそうにしていらしたので、良かったんだと思います。そんな愉快な待ち時間を経て全編まるで絵画のような映像を3時間、淡々と黙々と見続けました。その絵画の中に暮らす人々もただ黙々と祈りの日々でした。それぞれ小さな個室で寝て起きて、祈りや、食事もそこで行い、誰とも会話せずに暮らしていました。週に1回全員でご飯する日があり、その時は皆でお外でおしゃべりをしたり、冬には雪の上をソリすべりのようなことをしてアハハウフフしていました。おじいちゃんの修道士が鋏で布をチョキチョキして新しい修道服を作ったり、畑を耕して野菜の種を植えるなど、その全部を静かに行っていましたから、まったく大いなる沈黙でした。結構序盤で鼾をかいて寝ている人たちが何人もいらしたので、「寝ちゃいそう。」と言っていたあの男性も、きっとすばらしい睡眠を得ることができたと思います。騒々しい生活の中で、こういうのを体験してもいいと思いますがどうでしょうか。たいへんに面白い映画でしたので興味のある方は観たらいいと思います。