「ペガサスの挽歌」

ペガサスの挽歌 (シリーズ 日本語の醍醐味 4)

ペガサスの挽歌 (シリーズ 日本語の醍醐味 4)

わたくしは「趣味:読書」というほどの読書家ではないのですが、本は嫌いではないので本がすごく好きな人が企画したんだなぁと感じる書籍が好きです。真剣に取り組んだ結果のものに悪い物があるはずがないからです。わたくしは、丁寧なお仕事の雰囲気が感じ取れると、「プロの仕事かっこいい!」となる単純な人間です。この出版社のまっすぐ感はほんとうにいいので、毎回新刊が楽しみです。さてそんなわたくしの心のはみだしはどうでもいいとして、今回は皆川博子です。まだ今のように心根がカサついておらず、ジューシーだった頃に「少女外道」を読みましたが、それ以来の皆川博子です。哀愁とプチ恐怖が幻想的な表現でぎゅっと凝縮されていました。初期の児童文学が収録されているのですが、冒頭の「花のないお墓」でいきなり圧倒され、「コンクリ虫」のラストで切なくなったかと思ったら、ほっこりもやってきます。小説というより何か詩のような、そんな児童文学たちですから、これを読むだけでも価値ありだと思いますがどうでしょうか。お子さんがいらっしゃる方はぜひお子達に読ませてあげるとよいでしょう。これが文学ですよ、と。「黄泉の女」と「家族の死」はこころがざわつきますし、「ペガサスの挽歌」も「朱妖」もラストに大技がきまってかっこいいです。作品自体も見事ですが、チョイスと並びがまったく絶妙なので「見せ方大事。」てなりました。表現方法として、漫画や映画などの「映像」というものは優秀であるとおもいますが、これは特に文字で読んでもらいたい作品集です。あたまの中がすばらしくキラキラしますから、本が苦手な人も好きになるかもしれません。良い文学は想像力を成長させてくれます。想像力の欠如が誤解を招き、諍いを生み、せんそうをもたらします。わたくしたちを助けてくれるのはアベノミクスでも、集団的自衛権でもありません。良い文学が助けてくれるのです。と、思いますがどうでしょうか。そうでもないんでしょうか。