戦争反対。

未成年・桃 阿部昭短篇選 (講談社文芸文庫)

未成年・桃 阿部昭短篇選 (講談社文芸文庫)

親父が中途半端に偉い軍人だとなんか家の中がおかしくなるみたいです。戦争の弊害ですね。色川武大もそうであったし、とにかく書く題材にはもってこいだけど困った人であることには間違いないようです。わたくしの御父様が軍人でなくて良かったワイ、と思いますがそういう話はがっかり感があって面白いです。でも戦争はよくない。戦争反対!
「未成年」は退役軍人の父と母が生活のために空き部屋を貸して家賃収入でやっていこうとする話です。やっていこうとする、というかもうやっているのですが、軍人の奥様だった母親がまったくといっていいほど商売感覚がないので、あまり生活の足しになっていないという残念なやつです。主人公(学生)の間借り人たちへの感情が実に巧妙に描かれており、お父ちゃんの描写もとてもいいです。間借り人がイライラさせるやつらばかりなのでぜひ読んでいただきたいです。「ふくろぐも」は主人公が、昔ガキ大将で威張り散らしていた男に偶然再会する話です。主人公達をねじ伏せていたやつが怪しげな押し売りをやっており、今や社会的には主人公が優勢となっているわけです。元大将も状況を把握していてヘイコラしてくるのですが、最後に威嚇して去っていくのだった!再会して立ち去るまでのわずかな間の2人の男の心理が見どころです。恋人と母親に挟まれた男の話(「おふくろ」)は、この男何やってもこうやって逃げながら生きるんだろうし、女って邪魔くせぇ生きもんだなぁと思います(かく言うワシも女!)。この男に共感できる人は世の中に沢山いると思うので男性諸君よ読みたまえ。読んで身につまされるとよい。その他、入院中の男から友人宛の手紙や、母親と桃の木の話など、できれば全部コメントしたいのですが10篇もあって面倒なのでしません。あとは自力で読んで下さい。読み聞かせて下さい。はまぞうでリンクを貼ろうとしたのですが、検索の際に「阿部昭」とするところを「阿部勉」と入力してしまい、全く求めていない検索結果が出てしまいました。つい先日観た映画のせいだと思います。気を付けなければ己の知らぬうちにサブリミナル効果などのような手法で洗脳されてしまうと恐怖に打ち震えました。洗脳反対!