おんなの半生だぜ。

湯葉・青磁砧 (講談社文芸文庫)

湯葉・青磁砧 (講談社文芸文庫)

久しぶりに本の感想を書きます。平林たい子とかなんかああいう女の生き様みたいな作品はそんなに好きではないので、なんとなくわたくしの中で芝木好子もその類にくくっていて正直ちゃんと読んでおりませんでした。でもまあそこそこ大人になりましたし、一応ケコンもしたので感じ方が変わっとるのではないかと思いまして、ちょっとチャレンジ一年生してみました。
いきなりですがあらすじを言います。「湯葉」は主人公の蕗が湯葉商のお屋敷の養女になり、そこの極潰しボンボンと結婚させられまあなんかいろいろ頑張って最後には明治天皇崩御とともに棚を閉めるという話です。「洲崎パラダイス」はある飲み屋に転がり込んだ男女がしょうがねぇ情だけでずるぺたを繰り返し、もう別れるかなーと思ってたらさっさと二人でまたどこかへ流れていく、という話。これは飲み屋のおかみさんがいい味だしてます。「青磁砧」は陶器のコレクター父娘の話で男ができた娘にヤキモキする親父ってとこでしょうか。ってとこだけじゃないんですけど。なんかこうやって書くと全然面白くなさそうですが面白いので誤解しないでください。表現力がないのでこんなことになっているだけですので大丈夫です。わたくしは大丈夫ではありませんが。どういうところが良かったかといいますと、語り口調が物凄く第三者的な冷静な感じだったのでむやみに読み手の感情をかき乱すことなく、さらりと読めたところです。こういう(特に「湯葉」のような)テーマはやたらとドラマチックに仕立てられて、そこまで求めてねぇのに「ココ、泣き所やで!」「ここイライラするとこやで!」と煽ってくるものなのですが、いえ、そのようなものだと勝手に思ってますが、そういう気持ち悪いとこがないのでこれはええやつです。たいした出来事でなくても冷静に語れば語るほど聞き手は想像力が増すのです。面白く語ろうとしすぎて自分が「どぅふー!ぶほー!」と笑ってしまい、結果相手を半笑いにさせてしまった。よくあることです。あまり表情を作らず、むしろ真面目に語れば向こうが勝手に味付けして食べてくれます。ただし、想像力の欠けた相手にそういうことをすると笑いどころか半笑いも愛想笑いも引き出すことは出来ず、場合によっては「なんでそんなつまんない話すんの?退屈なの!?キーー!」と怒られるかもしれません。大人になって怒られるのはだいぶきついので気をつけたいです。