面倒臭い女ほどモテひこ。

幾度目かの最期 (講談社文芸文庫)

幾度目かの最期 (講談社文芸文庫)

有名なお話なのでネタばれとか気にせず書きます(いつも気にしてませんが)。名家のお嬢さんがなんかいろいろ(特に3人の男のことで)悩んで死んだ。というお話です。以上。いや、「死ぬわ、あたくし。」的な遺書です。遺書か遺作か?という議論とかまじでどうでもいいやと思っています。そんな議論はしたい人がなさればよいのです。わたくしはその「文章」が面白いか面白くないかだけを勝手に判断します。わたくしの面白さの判断基準に遺書か遺作かの違いはまったく関係ねいからです。随分昔にこの「幾度目かの最期」を読んで、なんか超めんどくせー女だなー。という感想を持ってしまい、敬遠していたのですが同時収録されている「灰色の記憶」を読んでから「幾度目〜」を読んだら嫌いじゃなくなりました。「灰色の記憶」はこういう少女は今でもいるし、その子供の頃の心の動きが非常に分かりやすく、あとやはり文体に癖がないので読みやすくて面白かったです。それと、昔読んだ時は今より全然若かったので、「幾度目〜」の中でそれぞれの男を(鉄路のほとり)、(青白き大佐〉、(緑の島)、と名付けて呼んでいるその感覚にまったく共感できず気色悪くて嫌だったのだろうと気付きました。それなりに色々な人間模様を見てそこそこ大人になった今では、久坂氏の育ち(環境)などを踏まえて推し量ることができるようになりました。成長、ですね。妻子ある男、なんちゃって婚約をした男など、それぞれ性格は違いますが、いずれにしろ自分が自由でいられる恋愛をしようとしたんだろうなーと勝手に分かったつもり!になっています。何はともあれ、「灰色〜」が収録されていたのがデカいです。やはり文芸文庫は価格が高い、という一点を除いてすばらしい文庫だと思いましたし、共感できるシチュエーションばかりではなくともそこに「面白さ」を見出すことができるようになりました。大人になりました、と言ってよいと思います。