文庫で1600円てばかじゃないの?死ぬの?

石の来歴 浪漫的な行軍の記録 (講談社文芸文庫)

石の来歴 浪漫的な行軍の記録 (講談社文芸文庫)

奥泉光ってこんなに面白かったの?!「プラトン学園」を読んで以降全くどの作品にも手を出しておりませんでした。とんだ粗忽者です。いやしかし、先にこの作品を読んでから「プラトン学園」を読むよりは良かったのかもしれません。わたくし個人としては、プラトンはあまり面白くなく印象も薄かったのですが、「石の来歴」はガツンときました。レイテ島で瀕死の戦友から聞かされた石の話に魅せられて、帰国後「石」にはまっていく主人公。この「石」に執着することで、家族が崩壊していくというお話。こんな説明されるとつまんなそうでしょ。つまんなそうだなー、と思って読むとまじで怪我しますよ。ええ。後半にゆくにつれて、現実と非現実(主にレイテの回想)がむやみやたらに交錯して主人公の家族がぐちゃぐちゃになってゆくのがめっさ伝わります。で、この「石の来歴」を作者が書きなおしたのが「浪漫的な行軍の記録」。「石の来歴」での視点が別の人間の視点から見ている風に変化した作品で、元の作品よりもさらに幻想的でより混乱します。この混乱が素晴らしいのでほんとに読んで良かったです。特に「浪漫的な〜」のほうは、語り口が本当に面白くてわたくしの好みの文体です。お堅い口調で、非常にシリアスな内容を投げやりな感じで語る。そんなかんじでしょうか。これで大東亜戦争がプラスされているわけですから、もうたまりません。失禁しました。(実際はしてませんからご安心ください。)