戻ってきました。

夜想 (文春文庫)

夜想 (文春文庫)

あー、これこれー。この感じを待ってたんですよ。これだよねーー、貫井さん。面白いからほんと、読んでない人は読んだらいいんですよ。「さよならの代わりに」を読んだ時のがっかり感はなしにしてもいいです。
主人公雪藤が妻子を亡くし、生きる気力を無くしていた時、天美という女子大生に出会うところから話が転がり始めますが、いつものごとく後半に進むにつれてスピードが加速する展開です。ちょっとしたきっかけで宗教団体にかかわっていくことになるのですが、この過程がまことにうまく描かれていて、現実味があってほんと面白い。ところどころに家出した娘を探すおばちゃんのエピソードが入ってきます。この、おばちゃんエピソードと本線がこんな風に交わりますか、はー、なるほどーー。です。ラストの切なさと温かさに納得。
「1Q84」もカルト集団のテーマを扱ってますけど、断然こっちをお勧めしますね。あんなクソオナニー小説を、おしゃれぶって「面白かったよ!」とか言ってんのは時間の無駄です(ちょっと言いすぎました。あいすいません)。テーマ詰め込みすぎてなにしたいのかね。全部の話がバラッバラじゃないか。とモヤモヤした人はこれ読んで。一個の題材を丁寧に扱ったらこうなりますよという、とってもよい見本だとおもいます。「1Q84」の面白さをわからないやつが偉そうに言っても伝わらないと思いますが、素直にいい作品でした。