あっという間に11月。

濁った激流にかかる橋 (講談社文芸文庫)

濁った激流にかかる橋 (講談社文芸文庫)

一年なんてあっという間だわ。今年もいろんな人に出会ってとても良い一年だったわ。ま、それはさておき伊井直行。同郷出身の作家ということで、読んでみようと思いつつもなぜが機会を逸しており、やっと手にすることができました。ある川で分断された二つの町(裕福な町と貧乏な町)で起こるそれぞれの人間模様を描いた寓話。こういう類の話は安っぽくなりがちなので心配だったのですが、寓話性も残しつつ、現実味もきちんと感じられてこれが意外と良かったのです。9つの話に分かれており、それぞれの主人公にあわせて文章が実に巧みに描き分けられてただただ凄いなと。川の管理機関に勤める病的な女の話はかなり現実的でコワイ。個々の物語が、明確にリンクしていないように感じたのですが、むしろそのさりげなさがこの小説の格をあげているのではないかなと思いました。格って大事よね。