うまく料理すれば嫌いなものも食べられる。かもしれない。

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

id:K2Daさんが面白いと言っていたので読んでみました。SF小説はあまり読まないので、ローカス賞受賞作品だろうがなんだろうがまったくスルーしていました。とんだ粗忽者でした。なぜこれをスルーしていたかと、がっかりです。私は頭が完全に文系なので、きっとこの作品群の半分も面白さを理解していないんだと思いますが、半分だとしても充分です。理系の人は面白すぎて失禁すると思います。否、もしかしたら理系すぎる人は、ストーリーがたいそう文学的なので物足りないかもしれません。つまり、何がいいたいかと申しますと、やばい面白いということなのです。これはちょっとSFを敬遠している人にはだいぶ推しです。「キューティ」は子どもが欲しくてたまらない男が、子どもを欲しがらない彼女を説得するのをあきらめ、自分で産むことにするのだけど、法律上人間としては認められていないキューティという4年しか生きないように設定された子どもを育てることにする。通常キューティは知能の発達に欠陥を与えられているので、知的な発達はしないはずなのに、男の入手したキューティは海賊版だったため……。ひゃー!あと「貸金庫」。なぜか目覚めるたびに別の宿主の頭に自分が入れかわっている男が、転々としたさきに出会った、もしかしたらこれが俺かもしれない宿主。そしてそこで真実を知り…。あひゃーーー!表題作の「祈りの海」はベアトリスを信仰する男と彼が住む星の話。セックスする度に男と女の生殖機能が入れ替わるというなんちゅう無茶苦茶な話か!!!つか、こえーーよ!!でもって「放浪者の軌跡」は、おれさまにはちょっと難しかったです。言っている理論がまったく理系で自分の理解力のなさにしょんぼり。でも道路で自らの理論をぶつおばはん(ちょっと宗教じみてていい)と、そのおばはんをネタにかけひきする男女の様が実に面白い。なんか女が強いのですな、どの作品も。強いっていうか、こわい。さらにすべてに共通するのが著しく内向的であるということか。この内向的なところが、文学的でまったく素晴らしいのです。読んでいない人は読んだほうがいいと思うのです。ええ、そう。あたしおもうの、読んだほうがいいって。