無味無臭。

木犀の日 (講談社文芸文庫)

木犀の日 (講談社文芸文庫)

短編集なんですが、どの作品も頭が疲れている人がたくさん出てきます。読んでるこっちがノイローゼになる感じです。表現が堅くて、なおかつ無感動な印象があるので最初とっつきにくいです。負けじと読み進んでいくと、いつの間にか一気に読み終わるという、大変不思議な作品です。とにかく内に内に向かっていて、起こった事柄の描写よりも、精神的なというか、心の表現に尽力しているといったところでしょうか。比喩的な表現が駆使されていて、男女の行為も夢か現かはっきりしない。まあなんともどんよりした作品でっせ。エンターテイメント性は皆無ですので、ハラハラドキドキを求める方には薦めねい。(早速つかっちゃった!キャハ)
虫歯の痛みから鬱になって、そのうち家族をおいて家を出て別の女性に養われる(のちにこの女と男の立場が逆転するんだけど)という「秋の日」と、入院した父親の髭を剃り続けた息子の話「髭の子」が特に良かったです。