何度も言うぜ。おもしろいから。

この再発見シリーズは選りすぐりをチョイスしているので、とても気に入っています。今日はその中の「変貌する都市」を。
島尾敏雄森茉莉梅崎春生村上春樹といった層々たる面子がそろっております。森茉莉の気違いマリアの気違いっぷりがコミカルで可笑しい。そしてハルーキはやっぱりオサーレね。なんか音楽とか、ワインの名前とか時計の銘柄とかこまけぇの。さすがハルーキです。描写がもっと鬱陶しくなると、これはハルーキではなくナベジュンになってしまうので注意が必要ですが。
で、この短編集の中に後藤明生の「しんとく問答」がありまして、これが面白かった。
有名な、折口信夫の「身毒丸」の由来となった伝説の里を訪ねた時の話なのですが、この伝説に関する分析もさることながら、「写ルンです」を所持して行ったという表現がおかしかった。後半は伝説の鏡塚を「写ルンです」で撮った、やれなにそれを「写ルンです」で撮ったといちいち「写ルンです」を取り出した描写が頻繁でもうコントです。ここはもう「カメラ」でいいんではないかと思うところも「写ルンです」と。「写ルンです」はカメラではないというこだわりがあるのか、もしくは「写ルンです」となにか関わりがあるのか知りませんが、とても律儀に「写ルンです」と表記するわけですよ。しまいのほうには、いつ「写ルンです」が来やがんのかドキドキですよ。ルンが片仮名だからおもしろいのか?いや、しんとく伝説や「身毒丸」について非常に真面目な考証がされている中に、ひょいと「写ルンです」が出てくるのが面白いのです。否、面白インです。