もはやライフワークなのか。

壺坂幻想 (講談社文芸文庫)

壺坂幻想 (講談社文芸文庫)

はい、また文芸文庫です。
小説よりも小説的な人生ですな、この方。
若いころ京都の寺で過ごしたことや、盲目の祖母、両親、祖父の愛人の遺児であったおじさんの話、また自らの障害を持った娘や最初の結婚での話など自伝です。一貫して冷静な語り口で、穏やかな雰囲気が漂ってますが、暗い。まぁくれぇの、内容が。でも、とても穏やか。こんな人生を過ごしてきたのかー。なるほど「飢餓海峡」しかり、「櫻守」もどことなく寂しい感じがする。つか「飢餓海峡」のあの重苦しく切ないのはこの人生あってのものかと、かなり解せましたよ。この自伝の中で、種田山頭火の墓参に行った話があるのですが、山頭火の句に対して日によって感動したり陳腐に感じたりする、というようなことを言っているのが面白かった。「分け入っても分け入っても青い山」とか、たしかにあれはどうなんだ?と思うこともあり、なんだかすごく深いなぁと思ったりすることもある。小学校や中学校で俳句や短歌を習った時は、「へーーーーー。」という感想だけでしたが、この歳になってくると妙にぐっときたりするようになってきた。
郷里の歌人ということもあって、若山牧水を例に出しますが「けふもまた こころの鐘をうちならし うちならしつつ あくがれていく」って・・・・。なんかすてき。外見は徐々にヨレて行きますが、歳をとるのは悪くない。