過剰なまでに実直

第一義の道・赤蛙 (講談社文芸文庫)

第一義の道・赤蛙 (講談社文芸文庫)

いわゆる戦中の転向作家ですね。
文学史でその名と、いくつかの作品名のみ
記憶していたのですが、
実際に作品を読んだのは初めてです。
一言でいうと、
重い。
表題作の「第一義の道」は、
母と息子の心の葛藤を描いてます。
母は、その父・夫・親族すべてに
恐縮しながら生きてきた人で、
息子は政治運動によって前科者として生きる自分が、
そんな母を、なお恐縮させていることをよしとしていません。
それでもどうしようもない現実と、
あまりの母の弱弱しさに、ただただ葛藤する日々。
母子のやり取りが、そこで見ているかのように書かれ、
それはもう、息苦しい程!
また、これに同じく収録されている、
島木の死によって未完となった「土地」は、
ある土地をめぐって、
一人の青年を取り巻く環境が
じわじわ変化していくという話で、
人の描写がホントに手抜きなしなのです。
もう、コレぐらい
どーんと重いと
かなりの「読んだ!」感が味わえますデスよ。
それにしても、過剰な正義感と優しさは、
人を幸せにしないもんだなと、改めて思いましたー。