難波送友人。

ネカマの星野さんが東京に見切りをつけ、故郷であるナニワに帰るというので、数人で集まってネカマを送る会を開催しました。送る会、といってもわたしとネカマ以外のネッ友たちには幼子らがあるため、子らが遊べるところということで、とある地方の水族館へ行きました。大変ありがたいことにネジ家がレンタカーを手配してくだすって、シヴ家以外のにんげんたちはそれによって水族館へ運ばれました。水族館はとても広く、子らはすぐに心のねじが外れていました。何をそんなに魚で笑うことがあるのかよ、というぐらいアハァ、アハハハハァ、と楽しそうに魚類を見ていました。それはまさに平和の象徴でした。この水族館には鰯やエイなどの定番の魚類たちの他に、「深海の生き物」という真っ暗なコーナーがありました。わたしは「深海生物だ!やたー!」とテンションがあがりました。ワクワクしながら暗闇に足を踏み入れると、いくつかの小さな水槽にライトが短周期でピカッ!ピカッ!と光っていました。光っている一瞬だけ中の生物を見ることができる、そういった仕組みなのです。「そうか、深海生物たちだから始終明るくしていてはいけないのか。なるほど。」となり、点滅の鬱陶しさに耐えて近寄ってよく観察しました。作り物でした。「ん?」となったので、もう一度見ました。何度見てもそれはプラスチック的な素材でした。いや、本物じゃないんかい。わたしは、そのコーナーでは唯一の「本物」である、リュウグウノツカイの遺体を鉄仮面のような表情で眺めました。LINEの通知があったので我に返りました。人々がわたしを見失っている様子がうかがえましたので、「リュウグウノツカイがいます。」と送りました。マンボウとクラゲをただただ眺めて人々を待ち、無事合流しました。そしてネカマが行方不明になりました。わたしが連絡を取るとネカマは「そちらへ行きます。」と言いましたが一向に来ません。再度連絡をすると「結局わからなかったので出口にいます。」と驚きの発言をしました。わたしは出口へ向かいました。そして会うなり「なぜわからなかった時点で、やはりわからないので出口で待ちますと連絡しませんの。」と説教をしました。ネカマに出会ってから数年経ちますが、大体において説教をしています。ネカマは「めんどうだったので。」と言いました。ぼんやりとただ説教されているだけなので、これを説教だと気付いていない、もしくはわたしの存在が見えていないかのどちらかだと思われました。「そういうとこですよ。」とさらに説教しかけましたが、ネカマはリハビリを頑張って右手が少し動くようになったので良しとしました。そういうことがなければさらに説教していました。水族館を後にし、皆で海鮮をおいしくいただき、子らはソフトクリームをドロドロにしながらアハハウフフしていました。シヴ家の子は賽の河原のごとく石を積んだり破壊したりしており、オカッパ家の子はなぜか車の後部座席をつるんつるんとすべり落ちる、という謎の運動を繰り返し、ネジ家の子は、帰りの車中でネカマがくれたマニ車を父の仇のように回して徳を積んでいました。この子らに明るい未来を。ネカマにすばらしい老後を。