カニ。

赤ん坊のころ、これは現実かな?と不安になるほどの驚異のブスさで父親にため息をつかせたことで有名なミキコフですが、幼稚園の年少組の時にお遊戯会で可愛い恰好でカニの子どもをやりました。白タイツにピンクの衣装を着用し、頭にはカニの絵を、両手にはカニの鋏を模した手袋のようなものを付け、同じ格好をしたおともだちたちと横歩きで「カニカニ。」と言いながら舞台に登場するのです。子を持つ親なら「あらかわいい。」とほほ笑ましくなる情景です。さらにわたくしは、タイツでつるんとすべり、舞台上でころんと尻もちをついたのです。観客たちはあははうふふと笑いました。そうです、これも「あらかわいい。」の情景です。その時の写真を大人になって見ました。そこにはオニかわいくない子どもがカニの恰好をさせられて無表情で立っていました。「すごいブスだな。こいつ。」そう思いながらアルバムをめくろうとしますと、横からおかはんが「かわいいじゃろ。」と言ってきたので、間髪入れずに「いや、どこが!」と答えました。おかはんは、数々のブス写真を見ながら「なんでよ。ほら、ようと見てんない。うちの娘が一番可愛いがね。こんげ可愛い子がおるかよ。」と言いました。とんでもないブスなのにかわいいかわいいと言って育てて下すってほんとうにありがていと思います。おかげさまで厚かましく、多少の事にも動じない、こころのつよいにんげんに成長しましたから、生きるのが楽ちんです。あと、成長したら可愛くはないけど言う程ブスじゃなくなったので、かわいいと言い続けたおかはんの念が通じたのかもしれません。カワイイは作れませんが、ブスは希釈できます。強い意思を持って言い続ければ願いは叶うというお話しでした。覚えておいてください。試験に出ます。