ほとけ。

週末ご用があって外出したのですが、行きの電車にお坊さんが乗っていました。そりゃお坊さんだって移動しますから当たり前なんですけど、そのお坊さんはたいへんに体格がよく、つるつる頭で厳めしい表情をしてぴしゃっと直立不動でしたから、「わ!お坊さんだ!なんかつよそうだ!」てなりました。その強そうなお坊さん(以下、つよぼうさん)は大きい手で大きい荷物を持って仁王様のようないかつさをかもしながらどこか一点を見つめていました。これからどこかの寺に行ってナムナムするのかもしれません。ナムナムし終わったら、また電車に乗って厳めしい顔をして帰宅するのでしょう。帰宅してもまたナムナムするんでしょうか。つよぼうさんは、出かける前もナムナムしてきたんでしょうか。つよぼうさんの一日が気になり始めました。宗派はなんだろうか、詳しい人は着ている物とかで宗派が分かったりするんだろうかなど、つよぼうさんのおかげで退屈な移動時間があっという間に過ぎました。ふとまわりを見渡すと、人々はスマホを指先ですごく擦っていました。スマホの画面を一心不乱にごしごしやっていました。気付くとその車両にいるほとんどの人間がごしごししていたのでオエーてなりました。つよぼうさんを見ました。つよぼうさんは、わたくしが乗ってきた時と全く同じ形でいかつく立っていました。「即身成仏!?」てなりました。しかしその瞬間、電車はある駅に到着し、つよぼうさんは背筋をしゃんとしたまま降りて行ったので即身していませんでした。あんしんしました。その日はたくさん移動して疲れましたが、たいへん素晴らしい日でしたから、仏様の御心のお蔭さまかもしれません。(たぶんちがいます)