もち。

今年の年末年始は実家に帰ることにしました。もう何年振りかです。何年振りか正確な年数は忘れました。そして年末は母と餅をつくことになっています。実際に餅をつくのは餅つき機なので、わたくしと母は餅をちぎって丸める作業をします。みなさんは餅をついたことがありますでしょうか。都会っ子のみなさんは、地域の行事や学校行事等、そういった場所でイベント的な気楽な気持ちでついたことがありましょう。田舎の餅つきは親戚一同が集まり、親戚一同の家族分を大量に、それこそ機械的に作るのです。男たちは杵と臼を駆使し、もち米をすっかりゲル状の物体に変えてしまいます。女たちはそのゲル状のものを延々とちぎり、丸めます。もはや工場です、マニュファクチュアです。餅づくりをなめないでいただきたい!餅づくりとは、餅とは!…すみません、餅のことになるとつい。まったくこれはわたしのいけないところですよ、ワトソンくん。さて、丸餅を作る時、丸めるのは簡単なのですが、実はちぎる作業が熟練の技なのです。つきたてホカホカの時でなければ餅はちぎれませんし、ただちぎってはうまく丸まりませんから、ちぎった瞬間にちぎり口を中にくるっと入れる作業も同時にしなけれななりません。ちぎってくるん、です。これを素早く正確に、しかも灼熱の餅をです。わたくしもやってみたことがありますが、おもてたより難しいです。なんせ餅が灼熱ですから。今回の餅つきは、機械がぺったんし、母がちぎってくるん、そしてそれをわたくしがすかさず丸める、です。切り餅にすればええやないか、というご意見もありましょうが、わたくしはずっと丸餅の文化で育ちましたし、あのまるんとした餅の餅らしさを捨てるわけにはまいりません。手間暇かければ、なんでもおいしくなります。おいしくなる気がします。これは餅づくりを熱く語るという形をかりて、回り道も大切であるというお話しです。人生も回り道した分、おいしくなります。覚えておいてください。(忘れてください)