真剣とおふざけのあいだ。

素Lさんが、「失踪者捜索のサイトを見つけたんだけど、これって真剣なのかしら?ふざけてるのかしら?」と言ってきました。そもそもなんでそんなサイト見てるのよ、と思いましたが彼女が示したURLをクリックしました。わりとふくよかな女性の写真が載っていました。夫と子がある方のようで、家族が「みんな待ってます。しぬほど悲しいです。」というようなコメントをしていました。なにをふざけたところがありましょうか。母の帰りを待つ子ら、毎日失踪者のことを考えながら暮らさなければならない家族のくるしみ。わたくしはとても切ない気持ちになりました。見ず知らずの家族の不幸に胸を熱くしておりますと、ある文章が目に入りました。「カンニング竹山に似ています。」まさか、そんな。もう一度見ました。「カンニング竹山に似ています。」そうですか、似ているのですか。いや、いるのか、この一文はいるのだろうか。写真が載っているのに、だ。ここにわざわざ載せるほどですから、普段から「ママ、竹山ににてる〜!」と言われていたのでしょうか。カンニング竹山さんはぜんぜん悪くありませんが、なにかこう、家族の切実さ、真剣さが削がれてしまうではないか、と残念な気持ちになりました。おそらく、藁をも掴む思いで考え付く特徴は全部書こうという気持ちだったのでしょうが、何か違う気がしました。わたくしは素Lさんを見て、こう言いました。「きっと真剣よ、真剣だからこそよ。」と。すると素Lさんが、「そうなの?わたしがこの人だったら、こんなこと書かれてるって知ったら帰りたくなくなっちゃうわ。」と言いました。そんなことで帰らないんじゃないんだよ、たぶんだけどと思いましたが、「そうね、ちょっといやかもね。」と答えたのでした。風のつめたい昼下がりの出来事でした。