チンパンジー。

チンパンジーって飼えるの?」わたくしはつまみ上げた大福餅を元に戻しました。素Lさんは真顔でした。「チンパンジー?」「うん、そう。パン君みたいな。」「飼いたいの?」「違うの、あたしじゃないの。親友が子供が出来なくってさびしい思いをしてるから、人間に近い動物を飼ったら悲しみが癒えるんじゃないかしらって。」わたしくしは再びつまんでいた大福餅をまた元に戻しました。「人間と人間に近い動物は全く別物だわよ。」「えっ、でもパン君可愛いじゃない。とってもおりこうだし。本当に人間の子と変わらないわよ。」このお嬢さんは飼えるか否かを本気できいている。その眼を見れば、いかに心がメカなミキコフでもわかりました。「チンパンジーはきっと国際条約とかで一般には飼えないと思うわよ。もし飼えたとしてもとても凶暴になるわ。成長するにつれとっても手におえないことになるわ。」「えー!そうなの??パン君優しいわよ、ワンちゃんをお散歩させたり、ワンちゃんとアイスを分け合って食べる心をもってるわよ。うちの子だったらきっと一人で食べちゃうわ。チンパンジーなら悲しみが癒える気がするの。ダメかしら?」そんなことでかなしみは癒えようか。わたくしは考えました。いや、癒えやしまい。いよいよ悲しみは増すであろう。これが人間の子だったら、と。「それはきっと違うわ。あなたが言っているのは、パンがないのならケーキを食べればいいのに、と同じことだわ。」素Lさんはとても残念そうな表情で、「そっかー。じゃあだめね。」と言いました。伝わりました。そしてわたくしは、ようやっと大福餅を口に運ぶことができたのです。ランチタイムから戻り、しばらく午後の業務をこなしていると、1通のメールがきました。「質問サイトで調べてみたの。やっぱり飼うの無理みたいね…。」伝わっていなかったようです。