空を自由に。

「羽が生えたら空を飛べる。ぜひ空を飛びたい。」というはなしを塾帰りの小学生たちがしていました。わたくしは高いところがあまり好きではないので、空を飛んだらとてもつらい。それに上空は放射性物質がたくさんたまっているかもしれませんし、思いもよらぬ風圧によりとんでもない形相で飛び回らなければなりません。こんな夢のない夢がありましょうか。夢というものはもっとファンシーでなければならない。ドラえもんタケコプターを具現化すると首がもげてとんでもないスプラッターになる、というのと同じく、ちょっとしたファンタジーなことを具現化しようとすればたちまちホラーになります。羽には蚤がつくでしょうからフロントライン的なものを定期的にささなければならないでしょう。また、その羽を支え動かすための筋力もいりましょう。羽根付き人間としてテレビや取材が殺到し、プライバシーは消滅します。それでも快活さを失わず、知的でユーモアのある発言をし、「羽が付いているのに卑屈にならず立派なひとだ!」と人気者になります。ところがある時、羽がある方はご遠慮願いますと入店拒否をされたエピソードをきっかけに袋叩きにあうのです。昨日の味方は今日の敵です。わたくしは心が幼稚な人間なので、「もはや何人たりとも信ずるものか。」と外の世界から遮断された自己の世界にとどまり、けっして人々とは交わることのない人生を選ぶことでしょう。「大空へはばたける!」その翼を得るとともに、わたくしの精神の自由は墜落したのだ!羽ばたくことなく、だ!高望みはしない。今のわたくしで充分なのかもしれません。