書聖と坊さんたち。

王羲之展、円空展、白隠展と美術館三昧の一日でした。一応、芸術系の学部を卒業したにんげんであるので、これが本来あるべきミキコフの姿なのだ。破天荒な発言で物議をかもし、数多の男遍歴を重ね、不可解な言動を繰り返し、最後は気が狂って「入滅〜☆」と書かれた遺書を残して猟銃でドーン!だ。ごめんだ、そんな人生はごめんだ。おれは静かに生死を全うしたいんだ。にしても王羲之はいい人生を歩んだ人なのだなと感じました。成る程、確かに王羲之の書体には余裕が感じられる。会場には書をたしなむ紳士淑女が沢山おりまして、其処此処でうんちく大会が繰り広げられておりました。わたしはその薀蓄を「なるほど、そうですか。」と盗み聞きしながら鑑賞しました。展示物のほとんどが漢文でしたので、インターネッ友の星野さんに解説をしてもらいました。星野さんは得意分野の話をするときでもいつも通り声を張らず淡々としているので、「この人の感情はいったいどうしちまったってんだい。」とやや心配になりました。その後、ついでに円空展を観ましたが、木彫りの仏さんがずらりと陳列されておりました。木彫りの仏さんは実に趣があってよろしい。こんなに仏に囲まれてすっかり心が洗われっちまうよ、と仏像を順に眺めておりましたら、唐突に「柿本人麻呂像」が出てきて虚をつかれました。仏だらけの中に人間が一体。柿本人麻呂も故人であるので、仏に組み込まれてもおかしくはないと思いますが、これは全く思いつきもしない実に巧妙なジョークだ。してやられたり。そう思いました。食事をした後、渋谷へ移動し白隠展にゆきましたが、こちらは王羲之と違って、なにやらアートな若者が多く来場しておりました。分かります。白隠はアートな若者が好みそうなアート感に溢れており、とてもカッケー作品ばかりでしたから。一日書を堪能し、高揚した気持ちでその日の夜に出品用の作品を練習しました。しかし、書けども書けども「おれの字はなんでこんなに無表情なのだ。そうか、おれのこころが無表情だからか。」とげんなりしました。人生。