蒲鉾。

働くおんなたちとランチしました。働く人間にとってランチはとても大切な時間です。だれに気遣うことなく物を食べ、おしゃべりができる時間。それがランチです。ですから、職場にもよるかと思いますが、ランチミーティングなどもっての他だと思います。めし食いながら仕事ってなんだよ、どっちかにしろよ。嫌な上司やそりの合わない後輩などと大事なランチ時間を共有し、うちに帰れば嫁の愚痴。飼い犬にすら吠えられる。サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだと言っていましたが、はたしてそうでしょうか。気楽な稼業のサラリーマンはサラリーマンピラミッドのほんの一部なのではないか。そう思います。さて、おんなたちとのランチですが、その日は皆で中華風のメイン料理にお吸い物と小鉢のセットを食しました。お吸い物を飲んだらかまぼこが入っていました。何気なく「あ、かまぼこ入ってた。」とつぶやきましたら、人々が「あ、ホントだ〜。」「あっ、わたしのにも入ってた。」と口々にかまぼこ発見の声をあげました。ただ一人、食貪さんを除いて。「えっ!それアタリじゃない?!私の入ってないよー!」と言っています。「アタリ、とは。」となりましたがまあいいです。ベアさんが「え?みんな入ってるんだし、食貪さんのにも入ってるんじゃないの?」と言いましたが、「え、ないよ、私の入ってないよ。ハズレだ〜。」と騒ぎます。しかしその直後、「あ!入ってた。」と叫んだのでどうやら無事見つかったようです。おめでとうございます。すると、別の女子が「あれ?わたし、メインのにもかまぼこ入ってる。」と言いました。食貪さんが色めき立ちました。すぐに全員のメイン料理からかまぼこが発見されましたが、それも再び食貪さんを除いた全員でした。お吸い物の時と同じ状況になりました。見つかるまで「自分のにだけ入ってない!ハズレだ!ハズレだ!」と訴える食貪さんを見ながら、全員が「入っとらんでもよかろう。」という空気になりました。結果、入っていました。助かりました。もう何人たりとも「かまぼこ。」と言わないでほしい。騒ぎになるから。いいえ、かまぼこが嫌いになってしまう可能性すらあります。食堂のテレビでは、年老いたおかあさんが中年の我が子に先立たれて嘆くのニュースが放送されていました。その横で「わたしのだけかまぼこ入ってない!」と騒いでいたのだった。我々はなすすべもなくただ見守るしかなかった。これが世にいう「食貪かまぼこ事件」の顛末である。