チカン、アカン。

カワさん(30代OL)が、以前電車で遭遇した痴漢について話していました。座席に座り、膝にカバンを抱えてうつらうつらしていると、住居のない市民風のおっさんがカワさんの横に座りました。しばらくして、カバンの感触とは違う何かを感じました。「膝が生ぬるい。」彼女は自分のカバンをスッと持ち上げました。住居のない市民風……めんどくせ、乞食じじいの手がそこにあった。「でさ、ココ(自分の二の腕あたりを指さしながら)、ココに急所あるじゃん。ココめがけてドーーン!(ブッチャーの地獄突きみたいな動きで)てやってやったよ。やんなっちゃうわね。」やんなっちゃいますね。痴漢をするようなやつは性欲だけでなくあらゆる欲が抑制できない人間ですから、いつ暴走するかわかりません。大変恐ろしい。そんな恐ろしい生物相手に咄嗟にドーーン!ができるだろうか、乞食にドーーン!できるだろうか、いいやできまい。カワさんは勇気がある。また、彼女の指し示した部位が急所であることなどわたくしは知りませんでした。カワさんは武術をたしなむのであろうか。なんて男前な女なのか。わたくしも普段から急所をねらう訓練をすべきであるかと考えるなどしました。自席に戻ってぼくちゃん(20代男子)に、「あなたさ、ココ(二の腕のとこ)が急所ってご存知?」と聞いたら、「知らないッス。」と言われました。「あら、そう。男の子だからそういうバイオレンスな知識あるのかと思ったんだけど残念だわ。」わたくしががっかりしたそぶりをすると、「いや、男だからってそういうの知ってる前提おかしいでしょ。あと、ぼく、男の子じゃないですから。」と言い返してきました。男の子だわと思いました。そんな男の子も知らない、人間の急所を心得てかつ活用できるカワさんはすげい。このコンクリートジャングル東京で生きてゆくために、わたくしも自衛意識を高めようと思います。そして不逞の輩にドーーン!をお見舞いする男前になります。最終的に髭が生えます。ヒゲコフになります。