おっちゃんとギャル。

予約した時間よりかなり早めに到着してしまいました。カフェに入りました。人の動きの少なそうな隅の席に座って、お茶を飲みながら読書をしていました。しばらくすると痩せた冴えないおっちゃんが隣の席に座りました。それはそれは冴えない感じでした。そのおっちゃんのカップからはコーヒーの匂いがしましたので、おそらくホットコーヒーであると思われました。するとほどなくしてギャル風の少女がおっちゃんの席にやってきました。「お久しぶりです。すみません、お忙しいところお時間いただいて。」ギャルな風体とはかけ離れたまことに丁寧な挨拶です。「いいや、かまわないんだ。調子はどうかな?」おっちゃんの声は姜尚中のような声でした。「姜尚中!冴えないのに!」と思いました。いったいどういう関係なのかたいそう気になりましたが、気になっている感をださぬよう素知らぬふりです。おっちゃんは少女の近況を聞き始めました。少女の近況はケータイ小説みたいな近況でした。サンジュンおっちゃんは「そう、そうなの。そうか、なるほどね。」と相槌を打っていましたが、少女の話が終わると、「君はとても立派だよ。そういうヌーバス(たぶん、ナーバス)な状況でも自分のやるべきことはしっかりやっているんだから。」と言いました。英語の発音のところが英語然としているのが気になります。少女はさらに、しかし両親との距離を埋めるすべが分からない。というようなことを言いました。おっちゃんは何か答えていましたが、「しかし君はまだとても若いから。世の中にはプーフェク(おそらく、パーフェクト)な人間はないのだから。ぼくだってプーフェクではない。もう少ししたらご両親の状況が理解できるようになると思う。あせらず云々…」というところだけ覚えています。わたくしは、「いや、英語!」てなったところだけ覚えていたのだと思います。10分もいたでしょうか。少女は仕事があるらしく、おっちゃんより先に店を出ました。ほんの数分でもサンジュンおっちゃんと話したかったのでありましょう。席を立つ少女におっちゃんは「またいつでもメールして。いつだってかまわないんだ。」と声をかけました。夜回り先生的なことでしょうか。いったいどういう関係だったのかはさっぱりわかりませんでしたが、サンジュンおっちゃんは話し方がとてもおもしろかった。わたしは本のページを無駄にめくっただけだった。