無の境地。

仕事の話をします。なぜならOLだからです。OLは仕事の話以外に何をするというのでしょうか。一日の大半を仕事に費やしているのですから仕事の話をするのです。ランチの話とかしません。そんなもん、飯食ってクソしてしまいの話だからです。わたくしがある業務を担当するようになって2年ほど経ちます。あ、もう本題に入っていますからついてきてください。その業務とは「毎月15日までに前月のデータをメールで送る」という簡単な作業です。手書きでデータを作るわけではありません。PCですでに出来上がった表に入力するだけですから、ややこしい計算はPCがしてくれます。それをメールに添付して送信ボタンを押すだけです。Exceloutlookを使ったことがある人ならだれでもできますし、なんなら初めて使う人でもできます。約2年間、ほぼ毎月、わたくしはリマインドメールをし続けました。リマインドがめっぽう好きだからではありません。それをしないと送ってくれないからです。2年間です。わたくしのやり方がまずいのです。最初に強めに「次回から必ず毎月15日を厳守してください。」と言えばよかったのです。しかし、派遣という立場上、会社との付き合いの長い業者より弱い立場にあるわたくしが偉そうにものが言えるわけがありません。なおかつ、何か特殊な資格を持ってする仕事でもなく、わたくしの代わりなどごまんといる業務ですから簡単にクビになってしまいます。クビはごめんです。お金が欲しいから。そうしてわたくしのチキンな性格が災いして約2年間、なめられ続けました。しかし、その間、ただリマインドし続けたわけではないということを言っておきたい。リマインドメールの宛先に業者さん本人とその方の上司とわたくしの上司を入れて送る、というなんとも性格悪すぎる対策を講じたこともあります。しかし、結果は同じでした。ただただ、わたくしの黒さを露呈したに過ぎなかったのです。わたくしは決心いたしました。「なにも言うまい。」と。困るのはわたくしですが、まあ、若干困るぐらいなのでもういいのです。期限を1週間過ぎた頃、その業者さんから電話が来ました。消え入りそうな声で「あの…、私、今月データの方送ってましたでしょうか?」と。消え入りそうな声は元々の声であって、反省はしていないと思いました。わたくしは「いえ、まだですね。宜しくお願いします。」とだけ言って電話を切りました。送ったかどうかすらもこっちに聞くとはなにかね。君自身の送信履歴を見れば一目瞭然ではないか。となったので、もう話したくなくなりました。その方に対して心が無になりました。5分後、メールが来ました。「申し訳ありませんでした。」はどこを見ても書かれていませんでしたし、たとえ書かれてたとしても心が無になっていますから何も感じなかったと思います。返信しませんでした。反応しない、ということで最後に気持ちを伝えました。伝わらないと思います。みごと鉄仮面のような表情でそのデータをチェックし、保存しました。「そうか、人間は一日の大半をこのようにして仕事に費やすのか。」と思いながらふと窓の方を見たら、ガラス拭きの人々がゴンドラに乗って降りてきました。わたしのこころもきれいさっぱり拭いてくれよ、この青い空のように。って、そんなに青くもねぇか。