ショートコント、取り調べ室。

あれは小学生の頃だったと思います。地域の子ども会で催されたクリスマス会でのことでした。子供たちはそれぞれ仲良しグループに分かれ出し物をしなければならず、手品や歌、ダンス、楽器演奏など次々に発表されてゆきました。しかし、残ったわたくしと友人あわせて4人は全く何も準備しておらず、皆が発表する間に慌てて考え始めるという、まことに残念なことになってしまったのです。我々の順番は刻一刻と迫っています。するとユミちゃんが「ミキコフちゃん、なんかコント考えてよ。」と言い出したのです。なんのつもりか。この時間で考えるのは無理ではないか。他の皆も無理だと思っているぞ、大丈夫かユミ!そう思ったのですが、他の皆は口をそろえて、「そうやわ!それがいいわ!だいたいの流れば考えてうちらに役付けてよ。あとはアドリブでミキコフちゃんが話を進めていったらいいわ!やろややろや!」と言ったのです。なんだとう!おまえだばかか!なんば言いよるとかよ!と心の中で叫びましたが、空気は完全にコントへ向かっています。もう、無理ばい。抗えんばい。台詞を覚える時間などありません。とりあえずユミちゃんには何を聞かれても「ハチヤマユミです。」と答えるように、エミちゃんには何が起きても「お前がやったんだろう!」と言うよう指示しました。そして残ったもう一人を記録係の刑事、わたくしがカツ丼を持ってくる出前のおっさんと決めました。お気づきかと思いますが、この頃大韓航空機爆破事件が報道されており、設定が取り調べ室ということになっているのです。むちゃくちゃです。我々はそれほどまでに追い込まれていたのです。だだスベリを覚悟しステージへ上がりました。しかし、幕が開くと田舎の民はやさしく、なぜか大ウケしてしまいました。特にお母さんたちが爆笑だったのです。時事ネタを取り入れたのが功を奏したのでありましょう。おっさんやおばはんは時事ネタが好きだからな!そしてなにより、子供の時は大抵のことは許されるのです。世のお父さんやお母さんたちは、もっと子供たちに無茶させてやってください。大人になったら大抵の事が許されなくなります。よろしくお願い致します。