ある日の電話。

出かけようとしたところに携帯が鳴りました。めずらしく兄からでした。何事にかあらむ、とでてみますと、その日は休みで録画しておいた番組を見ていると言っていました。はあ、そうですか。「今、タモさんがでてきた!赤坂でロケしたごたるよ!」と解説し始めました。ああ、先日4時間スペシャルをやっていためちゃイケのことであるなと察しまして、「知ってる知ってるー。それ少し見たよー。赤坂でやったごたるねー。」と、婉曲に「わたしはもう見たから内容は知っています。解説は結構です。」ということを伝えました。伝えたはずでした。おにいはまだまだ解説し続けました。わたくしは、「でた。」と思いました。おにいはとても妹思いなので、自分が面白いものは、このできそこないの妹にもお知らせして面白いを共有したいのです。出かけたいのだがなぁ、今は共有しなくてもいいなぁ、これは長くなりましょうから困ったことになりましたよと途方に暮れてしまいました。兄の解説は殆ど耳に入らなくなりました。おにいの声が呪文のように聞こえ始めました。頭の中に、タモさん、オカムラ、タモさん、タモさん、ヤベ、オカムラ…と木霊し始めました。…あああ、いかんいかん!このままでは日が暮れてしまいますばい!どこかで心を鬼にしてバッサリいかんと、4時間分の番組を解説されかねん!わたくしは意を決し、「あ、ごめん、わたし待ち合わせしてるからそろそろ行くわ!良い休日をおすごしくださいませー。」と言って携帯を閉じたのでした。待ち合わせなどしていませんでした。