かなしいおもいで。

(株)前科に勤務していた頃、わたくしはまだ20代後半でした。激務のためか心に余裕があまりなく、今よりもさらにガサツ人間だったと思います。そんな不肖ガサツミキコフのもとに中途で20代前半の若いお嬢さん達が2名入社してきました。営業部での採用でしたので、わたくしとは違う部署になるのですが、基本の庶務業務を先に指導してくれと頼まれたので、わたくしと後輩の女子と交代で指導にあたりました。どちらもとても元気でよく笑い、「食べても太らないんですよ〜!」と言うだけあって大変スレンダーな素敵女子でした。始めの頃は「ハイッ!」「私、やりますっ!」と2人ともハキハキしてなかなかよろしい、実に若者らしいではないか。と安心しておりましたが、やけに明るいなと思うことがちょいちょいあり、まさかの?と心配しておりましたら案の定、心を病んでいたのだった。2人とも。何人もの就職希望者の中から採用された選りすぐりのはずの2人が2人とも。おお、ジーザス(胸で十字を切っています)。わたくしは暗い気持ちになりました。せっかく時間を割いて教えた仕事も、きっとすぐに無駄になるだろうことが見えたからです。「また、辞めて行くな。きっと…。」生徒さん達が帰り、誰もいなくなった教室を片付け、窓を開けてドブ臭のする街並みを眺めていると後輩が一人やってきてこうわたくしに言ったのです。「Aさん(新人2人のうちの1人)辞めるらしいですよ。電話応対が怖くてできないって…。」「そっかぁ……。」後輩と二人、また外を眺めました。後輩がそっと言いました。「主任、この街、ドブ臭いですよね。」「人がすぐに辞めて行くのはこの臭さのせいだよ。」「ですよね!なんたって超臭いですもん。」「そうそう、この臭さのせい…って、そんなわけあるかい!たかだか街が臭くて辞めるわけあるかーい!」みなさんはこんなかなしいノリツッコミを見たことがあるでしょうか。いいや、ありますまい。このかなしいノリツッコミから程なくしてもう一人も同じような理由で辞めてゆきました。電話応対が恐怖なのになぜ電話応対メインの営業部にきたのでしょうか。(株)前科はビジネススクールでしたので、毎日「他人と話す」という事態が起こります。なんできたのでしょうか。リハビリのつもりだったのでしょうか。だとしたら心意気はわかりましたが、間違っています。なぜなら職場はリハビリテーションセンターではないからです。あの時、わたくしのかなしいノリツッコミを笑ってくれた後輩は、今は結婚しお母さんになって幸せに暮らしています。あの新人ちゃんたちも、今は幸せに暮らしていると信じタイ。Hold me tight!原発反対!