文芸文庫。わたしまけましたわ。

私のソーニャ/風祭―八木義徳名作選 (講談社文芸文庫)

私のソーニャ/風祭―八木義徳名作選 (講談社文芸文庫)

やられた。
まんまと、してやられたりです。
伊達に芥川賞作家じゃないですなぁ。
なんで今まで読まずにいたのかしら、
バカだわ私。
満州を舞台に、工場の求人貼り紙をたよりに応募してきた
ひどい吃音の男と、彼を採用した男の
胸の空くような芥川賞受賞作「劉廣福」。
自棄な生活をする男と、
儚げでありながらたくましい娼婦の
終わりの見えない退廃的な生活を綴った「私のソーニャ」。
幼少時代の思い出と、乳母への優しさに満ちた「雪の夜の記憶」。
年老いた母の為の、亡き父の墓参をきっかけに
本妻の子である異母兄との交流を書いた自伝「風祭」。
もう、どの作品も捨てがたし。
最後に「私の文学 抄」ってのが収録されておりますが、
これがあることで、
さらに作品の面白さがじわーと込み上げてくるとですよ。
この「私の文学 抄」には
小林多喜二や、横光利一、中條百合子(宮本)なんかも
登場しまして、もぉ盛り沢山!
これを純文学と言わずして何と言う。
また、これ、収録作品の選別がお見事でつ。脱帽。