桐山襲、この空しさ。

パルチザン伝説―桐山襲作品集

パルチザン伝説―桐山襲作品集

この人の作品は、書店で入手するのは困難かと。
今確実に入手できるのは
『未葬の時』(講談社文芸文庫です。
これは桐山氏作品で一押しです。ぜひご一読を!!
ただ、この作品について語ると、非常に長くなりますので、
本日は『パルチザン伝説』をご紹介します。
『未葬の時』に収録されております、
「風のクロニクル」同様、書簡で綴られる物語です。
主人公は反日武装戦線に所属し、天皇爆殺を目論みます。
もちろん成功はせず、彼は人としての生活を失います。
さらに彼が幼い頃、家族旅行へ行った際、
父親は岸壁に靴を残し、姿を消したのですが、
この父も戦時中、天皇暗殺に失敗したパルチザンだったのです。
親子二代、同じ目的への情熱と行動を起こし、
その結果得たものは、抱えきれないほどの空しさ。
人生のすべてをそれに費やし、何も残らない悲しさ。
桐山氏の作品は、本当に悲しい。
この、胸にガツンとくる切なさがたまらんのです。
発表当時、天皇暗殺を扱った作品のため、
発行禁止、著者が右翼団体に狙われるなどなど
物議を醸した作品だったようです。
ほんとに馬鹿馬鹿しい限り。
そんな危険な作品ではありません。
壮大で、手に負えないぐらい悲しい一編の詩です。