「とうもろこしの島」

odo-mikikov2016-09-23

くろさわとしおみたいなおじいとその孫娘が、無言で小屋ととうきび畑を作っているおはなしでした。ずっと作っていました。あまりにもずっとDIYするので、途中で「趣味百科かな?」となりましたが、だれも言葉を発するものがいないので、すぐにそれではない、ということがわかりました。くろさわおじいも孫も表情だけで察しろよと言わんばかりでしたから「無声映画だったかな?」となりかけたところで、孫がしゃべったので「しゃ、しゃべった!」となって面白かったです。途中、兵隊らしき人々が、おじいたちの中州の近くをボートでシャシャシャーと行ったり来たりし、血まみれの兵隊が投入されたりするので、どうやら二つの民族が戦争をしているということを察しました。争いの真ん中でおじいと孫はただ生活をしていました。自分の価値をまだ知らない孫と無口なおじいが、泥まみれ水浸しで静かに生きているところを観たらいいと思います。いい映画でした。

「めぐりあう日」

odo-mikikov2016-08-21

母探しが袋小路でうおー!となっている女の人が、子育ても袋小路でうおー!になっているお話でした。女の人はだいたいずっとうおー!して心が忙しいので、外国の人、感情がすごいなぁとなりましたが、映画全体は静かな空気で包まれており、まさに「女」を表しているな、なるほどよく出来ているなと感じました。最初から最後まで息子と夫はただ女の人の動きに寄り添っていたので悲しい気持ちになったり、謎解きではないのですが、絡まったものが時間を追うごとに解かれていくので面白かったです。最後にどうして自分を捨てたのか問うて、母の人がどう答えたのか描かれていませんでしたが、ラストの女の人と息子の表情を観てお前たち観客は感じろよということだなと察しました。察す能力があってよかったです。みなさんもうおー!を観て、最後に察したらいいと思います。以上です。

プレゼン

近所のスーパーに行った。鮮魚コーナーでおそらく4〜5歳と思われる男児が母親に魚はいやだと訴えていた。「ママ〜、お魚やだ!お魚食べたくない〜。」「ママはお魚食べるよ。」「やだやだ〜、お願い〜ママ〜。」母親は涼しい表情を崩さず、男児の必死の訴えもまるで店内のBGMであるかのごとく聞き流す。「ねぇ〜、ママったら〜。お肉食べたい〜、お肉〜。」「お魚食べると頭が良くなるんだよ。」魚を食べることのメリットで反撃か。「ぼくバカでいいもん。お肉〜。」おれの優先順位はそんなことじゃねぇ攻撃だ。カートに何かしらの魚の切り身が投入された。終了だ。「あ!パパもきっとお肉がいいよ!パパお肉好きだもん、パパ喜ぶよ、ママ!」自分のためにではない作戦に切り替えた。これはいけるか。「パパはお魚を出したらお魚を食べます。」あかんかった!いつの間にか鮮魚コーナーを過ぎ、加工肉コーナーも過ぎようとしている。と、その時、男児が動いた!「(スライスハムを手に取って)ハムでいいのでお願いします!」直訴だ、直訴、田中正造だ!母親が男児の手からハムを取った!いけたぞ!おまえはがんばったぞ、男児!「お魚美味しいよ。」ハムはそっと元の位置に戻された。「あは〜〜、お肉ぅ〜、マ〜マ〜ぁ〜〜、ねぇ〜。」彼のプレゼンは終わった。頑強な砦であった。しかし彼はがんばった。あの幼き者はどこで覚えたか彼なりの方法で健闘した。褒めてやりたいぐらいだ。しかし、わたしはレジで会計を待ちながら、ふと思った。普段「パパ」がそういうプレゼンをしているのかもしれないな、と。パパ、がんばれ。

「或る終焉」

odo-mikikov2016-06-25

この監督さんの映画は今後も気をつけなければいけない、の映画でした。「父の秘密」という全編むごし、ゴリゴリのむごしここに極まれりの映画をかつて観たのですが、その監督さんの作品だということで、たぶん普通には終わらないはずだと思っていましたが普通に終わらないどころか最後の最後で「ミギャーーッ!」てなりました。全編むごしのやつよりいろんなことを考えながら観ることができた(全編むごしのやつは考える余白を一切与えてくれなかった)ので、そこは良かったです。終末のひとと、それによって生かされているひとのおはなしだったので、おかはんのこととか考えました。生きるも死ぬも自分のものだということについて考えました。にんげんについて考えることができるというのはすばらしいことです。しかし、わたしは最後のシーンで放心状態になりました。我にかえったら、自分が「は!」という顔をしていることに気づきました。みなさんは映画館の暗闇の中で、ただただ無音のエンドロールを「は!」という表情で眺めたことがありましょうか。いや、ありますまい。おそらく100人中100人がミギャーーッ!となりますが、観たらいいと思います。にんげんについて考えたらいいと思います。脳は使わないとしぬので脳を使ったらいいです。しかし、「父の秘密」は観ない方がよいと思います。あなたたちはナイーブ族だから観たらしにんがでます。わたしは生まれつき精神がマッチョなので観てもしにませんでしたが、ナイーブの人々は無理をしないでください。以上です。

「さざなみ」

odo-mikikov2016-06-10

年配のご婦人方がたくさん観に来ていました。その観客たちと同じお年頃の妻と、年上の夫の、積み重ねた年月は無力である、のおはなしでした。男の後ろ向きと女のそれは全く違うのですが、とてもよく表現されていたと思います。メインキャストの年齢設定もまことに絶妙であると思いましたし、主演の女優さんはとても素晴らしいです。あんなにみごとな表情があるかよ、てなりました。いろいろなことにこだわりがあまりないので、妻のこだわりが実感できませんでしたが、わたしは頭がいいので、容易に想像することができました。こだわりに浸食されていく様がサスペンス感を醸しており、ほとんど変化のない映像に抑揚が出て上手だなぁと思いました。夫が定年退職した会社のOB会的なエピソードもよくできていて、つまるところ良い映画だから観てない人々は観たらいいと思います。上映期間終わっていますが、たぶんDVDとかになるとおもうので、ツタヤとかなんとかドットコムとかで借りたらいいです。そして、屋根裏で妻が「は!」となるところで「は!」となり、ラストシーンで「重い!重たかー!」となってください。以上です。

「緑はよみがえる」

odo-mikikov2016-05-01

イタリアの兵隊さんたちが、豪雪の塹壕でしんだように生きているお話でした。真っ白な積雪と厳冬の枯れ木の森と地下壕という、全体的に灰色の風景で始まりましたが、灰色のまま終わりました。兵隊さんたちは雪の塹壕にずっといました。ずっといてどこにも行かないし、どっか行こうとしたらすぐしにました。時折、敵の照明弾や銃撃の音がしており、おそらく目と鼻の先に敵陣があるのがわかりますが、その姿は最後まで出てきませんでした。後半にかけて、徐々に敵の音が近づいてきても、うおー!突撃だー!というお戦争アクションもなく、だれか一人の崇高で勇敢な上官も、極悪非道で孤独な独裁者もおらず、穴を堀り堀りしてしんだ人々を埋め埋めして、ただただ地下でにんげんしていました。戦地から故郷の母に手紙を書く主人公が突然独白し始めるのではっとしました。ひとがひとを赦すことができなければ人間とはなんなのか、とゆっていました。今の時代は赦すことも赦されることも拒否しているんだとおもいました。上映時間がとても短いので、兵隊さんたちが灰色の中でうごうごしているのを眺めていたら終わっていました。戦争映画の中でも上位にはいるやつでした。以上です。

「ファイヤー・フォックス」

唯一無二のお母さん、グレートマザーの看病の日々を謳歌することで有名なミキコフですが、洗濯物をたたみながら、BGM代わりにTV showをながら観しました。前半を少し超えたあたりで見始めたので何とも言えませんが、実に前衛的な、わたしのようなにんげんには手におえない映画でした。昔すごかった的な元パイロットおじさんが、延々戦闘機をのりこなし、ずっと一人でしゃべっているお話でした。ただただ戦闘機がぐるんぐるん、ビュンビュン飛んでいました。なんか、ずっとひとりごと状態のぐるんぐるん画面なので、観れば観るほどこころが瞼を閉じてゆきました。ピンチがきて乗り越えて、またピンチが来て乗り越える。最後は自分と同レベルぐらいの戦闘機と操縦しあいっこしてチャンチャンになったので、これは戦闘機のPVなんだなー、てなりました。「いい無駄」というものがこの世には存在するように「だめな無駄」も存在します。悪があれば善が存在する。光と影、陰と陽、愛と誠、さくらと一郎、昭和枯れすゝきです。無表情で画面を眺めました。無心で洗濯物をたたみました。たたみ終えてもその場に無心で座っていました。あまりにも無我過ぎて、このまま入滅するんじゃないかと思いました。映画館にわざわざ観に行かないし、テレビでももういいかなてなりましたが、久しぶりにブログできたのでありがとうございました。にんげんは感謝です。感謝のこころこそがにんげんなのです。以上です。